がん検診の世界に革命が起きています。尿を使って早期のがんを発見できる検査キットが実用化され、注目を集めています。この画期的な技術は、がんの早期発見と治療に大きな希望をもたらすものです。
尿でがんを発見する仕組み
この新しい検査方法は、主に2つのアプローチで実現されました。
- 線虫の嗅覚を利用した方法
- 尿中のマイクロRNAを分析する方法
線虫の嗅覚を利用した「N-NOSE」
株式会社HIROTSUバイオサイエンスが開発した「N-NOSE」は、線虫の優れた嗅覚を利用してがんを検出します。この技術は、九州大学大学院理学研究院の助教だった広津崇亮氏によって発見されました。
広津氏は、線虫ががん患者の尿に集まり、健康な人の尿からは逃げる性質があることを突き止めました。この発見を基に、わずか尿1滴で早期がんを検知できる技術を開発しました。
マイクロRNAを利用した「マイシグナル・スキャン」
一方、Craif株式会社が開発した「マイシグナル・スキャン」は、尿中のマイクロRNAをAIで分析することでがんリスクを判定します。この技術は、東京工業大学の安井隆雄教授(開発当時は名古屋大学准教授)によって開発されました。
Craifの共同創業者である小野瀨隆一氏は、自身の祖父母ががんに罹患したことをきっかけに、この技術の事業化に取り組みました。
検査キットの特徴
これらの検査キットには、以下のような特徴があります。
- 非侵襲的: 尿を採取するだけなので、痛みや不快感がありません。
- 高精度: 9割前後の精度でがんリスクを判定できます。
- 早期発見: ステージ1の早期がんも検知可能です。
- 複数のがん種に対応: 「マイシグナル・スキャン」は7種類のがんリスクを判定できます。
- 手軽さ: 自宅で検査を行い、郵送で結果を受け取れます。
今後の展望
これらの技術は、がん検診の在り方を大きく変える可能性を秘めています。特に、膵臓がんのような早期発見が難しいがんに対しても有効性が期待されています。
また、Craif社は検査可能な疾患の種類を増やすとともに、遺伝子解析による先天的な病気リスクの判定など、予防医療につながる新たなサービスの開発も進めています。
まとめ
尿を使ったがん検査キットの実用化は、がん医療における大きな一歩です。簡便で精度の高いこれらの検査方法が普及することで、より多くの人々が定期的にがん検診を受けられるようになり、早期発見・早期治療につながることが期待されます。
がんとの闘いは続きますが、このような革新的な技術の登場により、私たちはより強力な武器を手に入れたと言えるでしょう。