次世代エネルギー「水素」の生成方法と貯蔵・運搬方法

水素の生成・貯蔵・運搬

水素は、クリーンで持続可能な次世代エネルギーとして大きな期待を集めています。今回は、水素を生成するさまざまな方法や貯蔵方法・運搬方法についてご紹介します。

目次

主な水素生成方法

1. 化石燃料からの改質(グレー水素)

現在、最も一般的な水素生成方法は、天然ガスや石油などの化石燃料を原料とする「改質」と呼ばれるプロセスです。

  • 天然ガス(主にメタン)を高温の水蒸気と反応させる「水蒸気改質法」が広く利用されています。
  • この方法は比較的低コストですが、CO2を排出するため「グレー水素」と呼ばれます。

2. CCS/CCUSを組み合わせた改質(ブルー水素)

グレー水素の製造過程で発生するCO2を回収・貯留する技術(CCS)や有効利用する技術(CCUS)を組み合わせることで、環境負荷を低減した「ブルー水素」を生成できます。

3. 水の電気分解(グリーン水素)

水を電気分解して水素を生成する方法も注目されています。

  • 再生可能エネルギー由来の電力を使用すれば、CO2を全く排出しない「グリーン水素」を生成できます。
  • 主な電解方式には、アルカリ型と固体高分子(PEM)型があります。

4. その他の方法

  • バイオマスからの水素生成
  • 原子力を利用した熱化学法
  • 太陽光を利用した光触媒による水分解

水素生成の課題と展望

水素社会の実現に向けては、生成コストの低減が大きな課題となっています。

  • グリーン水素は環境負荷が最も低いものの、現状ではコストが高いのが課題です。
  • 水電解装置の大型化や効率向上、再生可能エネルギーのコスト低減などの技術開発が進められています。

日本では、福島県の「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」や山梨県での実証プロジェクトなど、大規模な水素生成技術の開発が進められています。

水素は多様な原料から生成できる点が大きな利点です。今後、技術開発によってコストが低減され、環境負荷の低い水素生成方法が普及することで、持続可能な水素社会の実現が期待されています。

水素の運搬・貯蔵方法とその特徴

水素は次世代のクリーンエネルギーとして注目を集めていますが、その効率的な運搬と貯蔵には課題があります。ここでは、現在研究開発が進められている主な水素の運搬・貯蔵方法とその特徴について紹介します。

高圧ガス圧縮

最も一般的な方法の一つが、水素を高圧で圧縮して気体のまま貯蔵・運搬する方法です。

利点:

  • 比較的シンプルな技術で実現可能
  • 水素をそのまま利用できる

課題:

  • 高圧に耐える特殊な容器が必要
  • 貯蔵効率が低く、大量輸送には不向き
  • 水素脆化による容器の劣化リスク

液化水素

水素を-253℃まで冷却して液体にする方法です。

利点:

  • 体積が気体の約1/800になり、大量輸送が可能
  • 純度の高い水素が得られる

課題:

  • 液化に多大なエネルギーが必要
  • 極低温を維持するための断熱技術が必要
  • 蒸発によるロスが発生

有機ハイドライド法

トルエンなどの有機化合物に水素を化学的に結合させて液体の形で運搬する方法です。

利点:

  • 常温・常圧で液体として取り扱い可能
  • 既存の石油インフラが利用可能

課題:

  • 水素の抽出に熱エネルギーが必要
  • 触媒の劣化や副反応の管理が必要

アンモニア

水素と窒素から合成したアンモニアの形で運搬・貯蔵する方法です。

利点:

  • 液化が容易で、高い水素密度を実現
  • アンモニア自体を燃料として利用可能

課題:

  • 合成・分解に大きなエネルギーが必要
  • 毒性があり、取り扱いに注意が必要

水素吸蔵合金

特殊な金属合金に水素を吸蔵させて貯蔵する方法です。

利点:

  • 安全性が高い
  • 比較的低圧で水素を貯蔵可能

課題:

  • 重量あたりの水素貯蔵量が少ない
  • 高コスト

まとめ

水素の運搬・貯蔵方法には、それぞれ長所と短所があります。用途や規模、インフラの状況などに応じて最適な方法を選択することが重要です。今後の技術革新により、これらの方法がさらに改良されるとともに、新たな手法も開発されることが期待されます。

水素社会の実現に向けて、効率的で安全な水素の運搬・貯蔵技術の確立が不可欠です。各方式の特徴を理解し、適材適所で活用していくことが、持続可能なエネルギーシステムの構築につながるでしょう。

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