ペロブスカイト太陽電池とは?

ペロブスカイト太陽電池のイメージ

ペロブスカイト太陽電池は、軽量で柔軟性があり、低コストで製造可能な次世代の太陽電池として注目を集めています。シリコン太陽電池に匹敵する変換効率を持ちながら、さまざまな形状や場所での設置が可能であることから、太陽光発電の新たな可能性を切り開くと期待されています。

目次

低照度環境での発電能力

ペロブスカイト太陽電池は、低照度環境での優れた発電能力を持つことが大きな特徴です。従来のシリコン太陽電池が高照度(約10万ルクス)の光を必要とするのに対し、ペロブスカイト太陽電池は1000ルクスや200ルクスといった低照度でも効率的に発電できます。この特性により、曇りや雨天時、室内のLED照明下でも発電が可能となり、IoT機器の電源など、様々な用途での活用が期待されています。さらに、ペロブスカイト太陽電池は広い波長範囲の光を吸収できるため、屋外から屋内まで1000W/m2~1W/m2の広い光量範囲で高効率の発電が可能です。この低照度での高い発電効率は、従来の太陽電池では難しかった場所や状況での発電を可能にし、再生可能エネルギーの利用範囲を大きく拡大する可能性を秘めています。

ペロブスカイトの結晶構造

ペロブスカイトの結晶構造は、ABX3の一般式で表される立方晶系の構造を持ちます。この構造では、Aは立方体の頂点、Bは中心、Xは面の中心に位置しています。ペロブスカイト太陽電池で使用される典型的な材料では、Aはメチルアンモニウムなどの有機カチオン、Bは鉛やスズなどの金属、Xはヨウ素や臭素などのハロゲンです。この結晶構造の特徴として、高い対称性と柔軟性があり、様々な元素の組み合わせが可能です。これにより、電気的・光学的性質を調整でき、太陽電池材料として優れた特性を示します。ペロブスカイト構造の柔軟性は、高効率な太陽光変換と低照度での発電能力につながっており、次世代太陽電池としての期待を高めています。

ペロブスカイトの優位性

ペロブスカイト太陽電池には、従来の太陽電池と比べて多くのメリットがあります。まず、軽量で薄く、柔軟性があるため、これまで設置が難しかった場所にも導入できます。建物の屋上や壁面に薄いシートとして貼り付けたり、曲面を持つ設備にも取り付けられます。また、ペロブスカイト太陽電池は、シリコン太陽電池の10分の1程度の重さで、厚みは100分の1程度と非常に軽量かつ薄型です。さらに、ペロブスカイト太陽電池は低コストで製造できることも大きな利点です。塗布や印刷などの簡易な製造工程で作れるため、材料コストと製造コストを大幅に抑えられます。加えて、ペロブスカイト太陽電池の主要材料であるヨウ素は日本国内で調達可能であり、サプライチェーンの観点からも優位性があります。このように、ペロブスカイト太陽電池は軽量性、柔軟性、低コスト性を兼ね備えており、従来の太陽電池の課題を解決し、太陽光発電の適用範囲を大きく広げる可能性を秘めています。

急成長する市場規模

ペロブスカイト太陽電池の世界市場は急速な成長が予測されています。富士経済の調査によると、2040年までに世界市場規模が2兆4000億円に達すると予想されており、2023年比で64.9倍の拡大が見込まれています。この成長は、既存太陽電池からの置き換えや高効率なタンデム型の普及によるものです。市場の本格的な立ち上がりは2020年代後半と予測され、特に中国を始めとする海外企業が2025年から2030年にかけてギガワット級の生産体制構築を計画しています。日本国内では、2040年度の市場規模が233億円と予測されており、建材一体型太陽電池(BIPV)やペロブスカイト/シリコンのタンデム型の開発・生産により急成長が期待されています。ペロブスカイト太陽電池の高性能化と低コスト化が実現すれば、2035年には世界市場規模が1兆円に達するという予測もあります。

課題と研究開発

ペロブスカイト太陽電池は高い潜在性を持つ一方で、実用化に向けていくつかの技術的課題に直面しています。主な課題は耐久性と安定性の向上です。ペロブスカイト材料は湿気や紫外線に弱く、長期的な性能維持が難しいという問題があります。また、鉛を含む材料の使用による安全性の懸念も存在します。これらの課題に対し、研究機関や企業が積極的に取り組んでおり、封止技術の改良や代替材料の開発が進められています。最新の研究開発では、変換効率のさらなる向上も重要なテーマとなっており、セルレベルでは25%まで向上していますが、今後はモジュールでの高効率化が課題となっています。タンデム型の開発により、変換効率30%以上を目指す動きも活発化しています。これらの技術開発により、ペロブスカイト太陽電池の実用化と市場拡大が加速すると期待されています。

企業の技術開発動向

ペロブスカイト太陽電池の技術開発と商品化に向けて、多くの先端企業が積極的に取り組んでいます。
積水化学工業は、NTTデータと共同でフィルム型ペロブスカイト太陽電池を建物外壁に設置する国内初の実証実験を開始し、実用化に向けた重要な一歩を踏み出しました
キヤノンは、ペロブスカイト太陽電池の耐久性と量産安定性を向上させる高機能材料を開発し、2025年の量産開始を目指しています
リコーJAXA桐蔭横浜大学と共同でペロブスカイト太陽電池の開発を進めており、三菱マテリアルも研究開発に参画しています
エネコート・テクノロジーズは、京都大学の研究シーズを基に起業し、ペロブスカイト太陽電池の材料開発とモジュールの製品化に取り組んでいます
これらの企業の取り組みにより、ペロブスカイト太陽電池の実用化と市場拡大が加速することが期待されています。

明るい未来への期待

出典:富士経済「2024年版 新型・次世代太陽電池の開発動向と市場の将来展望」

ペロブスカイト太陽電池は、その優れた特性と市場の急成長により、今後の太陽光発電を牽引する次世代技術として大きな期待が寄せられています。技術開発の進展により、変換効率の向上と耐久性の改善が進み、実用化への障壁が着実に取り除かれつつあります。また、軽量性と柔軟性を活かした新たな用途の開拓も進んでおり、建材一体型太陽電池(BIPV)や電気自動車への応用など、従来の太陽電池では困難だった分野への展開が期待されています。

さらに、ペロブスカイト太陽電池とシリコン太陽電池を組み合わせたタンデム型の開発により、変換効率30%以上の達成が視野に入ってきています。このような高効率化は、太陽光発電のコスト低減と普及拡大に大きく貢献すると考えられます。 市場規模についても、2040年には2兆4000億円に達すると予測されており、今後の急速な成長が見込まれています。

ただし、実用化に向けては、さらなる耐久性の向上や鉛を含まない材料の開発など、いくつかの課題も残されています。これらの課題解決に向けて、国内外の企業や研究機関が精力的に取り組んでおり、官民一体となった支援体制の構築も進められています。 ペロブスカイト太陽電池の今後の発展には、技術開発と市場開拓の両輪が欠かせません。日本企業の強みを活かしつつ、海外勢との競争にも打ち勝つことで、次世代太陽電池の主導権を握ることが期待されています。

ペロブスカイト太陽電池のイメージ

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