全固体電池の可能性

全固体電池は、電気自動車の性能を飛躍的に向上させる次世代電池として注目を集めています。従来のリチウムイオン電池と異なり、液体の電解質を固体に置き換えることで、安全性の向上、エネルギー密度の増加、充電時間の短縮など、多くの利点を持つとされています。

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トヨタの全固体電池戦略

トヨタ自動車は全固体電池の実用化に向けて積極的な取り組みを進めています。同社は2006年から要素技術の研究開発を開始し、2023年には出光興産と業務提携を発表しました。両社は2027年から2028年にかけて全固体電池搭載の電気自動車を市場に導入することを目指しています。トヨタの戦略では、硫化物系の固体電解質を採用し、石油製品の製造過程で発生する硫黄成分を活用する計画です。この次世代電池により、10分の充電で1200kmの航続距離を実現し、電池寿命も大幅に延長されると期待されています。トヨタの全固体電池戦略は、同社の電気自動車事業の競争力を高め、自動車産業の未来を変える可能性を秘めています

全固体電池の安全性向上

全固体電池は、従来のリチウムイオン電池と比較して大幅に安全性が向上しています。液体電解質を固体電解質に置き換えることで、液漏れや発火のリスクが大幅に低減されます。固体電解質は高温や低温でも安定した性能を維持でき、幅広い温度範囲での使用が可能です。また、全固体電池は衝撃による破損時の発火・爆発リスクも低く、高温・高圧環境下でも安全性が高いとされています。さらに、酸化物系固体電解質を用いることで、硫化物系で懸念される硫化水素発生のリスクも回避できます。これらの特性により、全固体電池は電気自動車やその他の用途において、より安全で信頼性の高い電源として期待されています。

全固体電池のエネルギー密度

全固体電池の開発において、エネルギー密度の向上は重要な目標の一つです。TDKは従来品と比較して約100倍のエネルギー密度を持つ全固体電池用材料の開発に成功し、1000Wh/Lという高い体積エネルギー密度を実現しました。これは現行の電気自動車向け蓄電池にほぼ匹敵する水準です。一方、ソフトバンクとEnpower Japanは全固体リチウム金属電池セルで350Wh/kgの重量エネルギー密度を達成し、2024年度中に400Wh/kgの実証を目指しています。これらの技術進歩により、全固体電池は小型電子機器からHAPS(高高度プラットフォームステーション)、電気自動車まで幅広い用途での活用が期待されています

全個体電池関連企業

全固体電池の開発競争が激化する中、日本企業が技術面でリードしています。

トヨタ自動車(7203):全固体電池の開発で世界最多の1,000以上の関連特許を保有し、2027年にもEVの電源として実用化を目指しています。その航続距離は1回の充電で1000kmともいわれています。ワクワクしかないですね。

三井金属鉱業(5706):全固体電池向け固体電解質「A-SOLiD」を開発し、トヨタへの供給が報じられています

出光興産(5019):2001年から硫化物系固体電解質の研究開発に着手し、日本での先駆的存在となっています

日立造船(7004):2021年に世界最大級の容量1000ミリアンペア時の全固体電池を開発し、実績を上げています。これらの企業は、独自の技術力や長年の研究開発経験を活かし、全固体電池の実用化と性能向上に向けて着実に進展しています。

TDK(6762):2020年に世界初のSMDタイプのオールセラミック全固体電池「CeraCharge」を製品化し、IoT機器向け小型電池市場でリードしています。さらに2024年6月には、従来品の約100倍となる1,000 Wh/Lという高いエネルギー密度を持つ全固体電池用材料の開発に成功。高い安全性と熱安定性を持つ酸化物固体電解質技術によりウェアラブルデバイスなど身体に直接触れる機器への応用が期待されています

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